Archive23-06 上路

上路市剛 作品集刊行記念展
「受肉/Incarnation」

会期:
2023年6月7日(水)〜6月24日(土)

上路市剛 略歴

上路市剛氏は、歴史上の人物や美術史上の名作に登場する人物をモチーフとして緻密で写実的な立体作品を制作する彫刻家です。その対象が実際に存在することを想定し、対象の骨格や肌の質感、頭髪等について解剖学的な検証を行い、着衣など装飾物はその時代背景などから考証し、それらの結果をもとに、高度な造形技術で徹底したリアルを追求します。その制作過程では、それを継承してきた人々の思いや社会情勢などその対象が歴史に残った理由や、不朽の名作の作り手の情念や動機などに迫っていきます。
本展は氏の初となる作品集『受肉/INCARNATION』の発売を記念した個展となります。

『今回の展示タイトルは「受肉」です。これは「神が人の形をとって現れること」という意味のキリスト教の用語です。私はこの現象を「神」を「美意識」と、「人」を「作品」と置き換えて、展示のタイトルとしました。
私の制作スタイルを表面的に説明すると「過去の名作をリアリズム彫刻に変換すること」となります。この表現は間違いではないのですが、その対象の定義が不正確です。私がリアリティを与えたいのは、表面上の「写実性」ではなく、人物表現を通じて巨匠たちが表現したかったであろう「美意識」の方です。
美術作品というのは、ただ単に技術的に優れているという理由だけでは、不朽の名作として世界的な評価を受けることはないでしょう。その奥には常人離れした強烈な執着や欲望が詰め込まれているはずです。その秘められたエネルギーを抽出し、私自身のエネルギーをも付加して作られるのが、私の彫刻作品です。神のごとく神格化された名作に込められた作り手の衝動を炙り出し、私というフィルターを通して固定化する。それこそが私が受肉させる彫刻の正体です。』(上路市剛)

また、合わせて本展に出展される、人間の日焼け跡の境界を描く抽象画の平面シリーズ「Border」はリアリズム彫刻の肌の塗装技術を使って肌の色のみを抽出した作品です。
人間の肌の色の違いはメラニンの密度に由来し、黒、白、黄色などの「色の違い」ではなく、メラニンの密度の違いからくる「明度の違い」であるということから、「Border」は彫刻作品の肌の色を抽出した「抽象画」でありながら、現実的なモティーフは「日焼けの境目」を描いており、一方では「人種間の壁」に問題意識を感じながら制作された、複数の意味での「境界」をコンセプトとする作品シリーズです。

最新作「ダビデ」をはじめとしたリアリズム彫刻シリーズを始め、人間の日焼け跡から着想を得た抽象画の平面シリーズ「Border」など、多数作品を発表いたします。
本展期間中の6月17日からは会場にて作品集の先行販売をいたします。

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